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タブー:デリケートな話題のリサーチにSNSデータが適している理由

作成者: Talkwalker (日本)|3月 8, 2022

消費者インテリジェンスの例をチェック

初めて本格的な仕事に就いたとき、私は大きなオープンスペースのオフィスで働いていました。お互いのコンピュータースクリーンが見える状態で、細かい内容はわからなくても、大まかな内容は見ることができました。そのため、知らない同僚が頻繁に私のデスクにやってきて、一風変わったデスクトップ背景について質問してきました。私は「お気に入りの絵画なんです」といつも答えていました。「リー・クラズナー(Lee Krasner)の『Another Storm』という作品で、生理中の感覚を思い起こさせるから気に入っています」

リー・クラズナーの『Another Storm』。クラズナーはジャクソン・ポロック(Jackson Pollock)と結婚しましたが、不当にも彼に比べて有名ではありません。

こう言うと、リアクションは常にさまざまですが、ほとんどの人は最初に驚いた後、気絶したり嘔吐することなく、この肉体の自然な機能について意外と普通に会話できるものだと気が付いたようでした。

私はいつもタブーを破ることを楽しんできました。なぜあるトピックは話すことがはばかられるのか、それは本当にはばかられるべきことなのか、そうした会話のルールについて、ついあれこれ考えてしまっていました。しかし、研究者にとっては、そこにこそ本当に興味深いインサイトが存在するのです。語られないもの、後から語られるもの、心を開いた相手だけに語られるものの中に。

しかし、私が職場でタブーを破ってさまざまな考察をめぐらしたところで、社内の雰囲気が変わり、オープンな会話がしやすくなる程度だと思っていました。ところが、discover.ai/Talkwalker*に入社したときに初めて、これをクライアントへのサービスに活かせるかもしれないと気づいたのです。そして、それを可能にしたのはSNSデータでした。

「タブー」とは興味深い概念です。「話さないもの」という意味を含んでいますが、そのこと自体が矛盾しています。タブーな話題とは、話されてはいるけれど、「普通」の話題を話す際にある安心感がない話題です。タブーな話題とは、それを話に出すことで波紋を呼ぶ危険があり、人々が恥、決まりの悪さ、さらには罰を恐れて、言いたいことと自分が直接関係があるとみなされることを避けたがる話題です。

インターネットが登場して以来、その匿名性と距離感ゆえにインターネットは、人々が「現実世界」で面と向かって言えないことを言える場所となっています。私はクライアントとブリーフィングをする際、よくこう伝えます。人々がわざわざ自分たちに役立つものとしてこれをネット上で話題にするだろうかということを現実的に考えてください、と。しかし、それがタブーな話題(月経、セックス、メンタルヘルス、勃起障害、コンドーム、失禁、更年期、子宮頸がん(すべて実際にあったプロジェクトのテーマです))の場合は、そう注意する必要はありません。

SNS上のタブーな話題のすばらしいところは、従来の調査でクライアントがよく経験した状況とは真逆の反応だという点です。インタビューやフォーカスグループでは、回答者が安心してデリケートな話題を話せるように配慮した関係を築かなければなりません。しかし、インターネット上であれば、彼らがそれを進んでやってくれるのです。

消費者の言動を理解するためにDurex社と行った取り組みの一部を発表したとき、プレゼンテーションのタイトルを『最新手法を活用して世界最古の問題を理解する』としました。

上図をクリックすると、『最新手法を活用して世界最古の問題を理解する』のプレゼンテーションを視聴できます(YouTubeでのみ閲覧可能)

この点が、SNSデータを活用してタブーな話題を理解することの核心だと私は考えます。人々が他の場所では話せないことをネット上で話す理由は、体の自然な機能やよくある疾患が恥ずべきものだと口封じされていることがネット上で助けを求める行動につながっているからです。

人々はネット上で知識やアドバイスを共有し、自身の問題に対する知識やアドバイスを求めます。従来の場所ではこうした情報は入手できないからです。消費者を支援し、長年求められてきた分野で真の改革に向けた道を切り拓こうとしているブランドは、SNSデータとAIによる調査を活用することで実現に近づくことができ、昔から広く存在する問題に対する新たな視点を得られます。

どんな調査にも、注意するべきことや危険なことが伴います。当社は消費者の掲示板、ディスカッショングループ、書籍レビュー、専門家のサイト、ブロガー、インフルエンサーなど、誰かが自身の感情や反応を共有している可能性のある場所からソースデータを構築します。しかし、データを豊かにするものこそが同時に危険をもたらすことにもなるのです。

ジェシカ・マーカス(Jessica Marcus、Storyful社)と提携して制作した慢性外陰部痛や膣痙のような膣痛疾患を理解するプロジェクトで述べましたが、女性はなぜ恋人とセックスができないのかを調べるために掲示板に書き込み、インターネット上の赤の他人が遠隔地で診断を下す、ということが起こっています。これがきっかけとなって医師に相談するケースも多いですが、誤情報やインチキ療法の被害にあうリスクもあります。

Talkwalkerのクイックサーチによると、13ヶ月間で慢性外陰部痛や膣痙のメンションは68,800件ありました。しかし、このデータから実態を知るには人間によるインサイトと分析が必要です。

また、データは多様な情報源から集められたものでなければなりません。SNSデータはさまざまな民族、人種、宗教、性自認、そして障害や慢性疾患を持つ人々からの声を、それぞれの枠を超えて共有することができます。

このような人たちは、構造的または物理的な障害によってフォーカスグループに参加できなかったり、参加しても声が届かない可能性がある人たちです。しかし、偏見は常に存在します。ネット上のエコチェンバー現象を避け、できるだけ幅広く、ありとあらゆる声を正確に反映させたデータを取得する必要があります。

だからこそ、AIとSNSデータによる分析を行う際に人間の目を加えることが非常に重要なのです。AIはどの声が真実で、どの声が「ノイズ」なのかを判断できません。テクノロジーは新しい視点を与えてくれますが、人間こそがそれを活用して、真に実用的なソリューションを考え出すのです。

ずいぶん前から、私のデスクトップ背景に「ショック」を受ける人がいなくなりました。タブーな話題に抵抗のない環境で働くこと、データに偏ったインサイトに異議を唱えること、職場で自分の生理を話題にすることは、もはや特別なことではなくなりました。

しかし、こういった話題を日々取り扱っていても、人々が自分にとって重要なことを率直に話せないことによって彼らの生活、健康、現実に影響を受けることを知ると、ショックを受けます。データを集めることは始めの一歩にすぎず、それを行うツールはすでにあります。しかし、集めたデータを使って何をするかということの方がより重大で、より差し迫った課題であり、そこから本当の仕事が始まるのです。

*Talkwalkerは2021年10月にdiscover.aiを買収しました